こんにちは!雷美(らいみ)です!前回の教えてチャーリー!に引き続き、昨年末のRIZIN.20の試合をRIZINマッチメーカーのチャーリーさんと一緒に振り返っていきたいと思います!
ーーチャーリーさん、ごきげんよう!前回のお話の最後に『際』がキーになった試合として挙げていたRIZIN.20の石渡扇久保戦の話を聞きに来ました!
お疲れさまです。浜松大会までもう1ヶ月を切っちゃいましたが、素晴らしい試合だったのでちょっと試合を振り返りましょうか。
ーー私、毎大会後に実施する「来場・視聴者アンケート」の集計のお手伝いもしているんですけど、今回のアンケートの「一番印象に残った試合は?」の回答数の第2位がこの石渡扇久保戦だったんですよ!
へ〜、そうなんですか。それだけの凄い試合でしたからね。ちなみに第1位はどの試合だったんですか?
ーー第1位はライト級グランプリ決勝戦でした!
それは納得です。っていうか雷美さん、これ以外にもちゃんと働いているんですね。(本当に知らなかった…)
ーー「来場・視聴者アンケート」の結果はちゃーんと拝見し、今後の運営の参考にさせていただいております!!(ビシッ!)
皆さんあっての我々ですもんね。さて早速この試合について振り返りたいと思うのですが、その前にまず、この二人がRIZINの舞台で試合をするという意味が大事なんです、と言うことを雷美さんに伝えたいです。
ーーむむむ、それはパンクラス王者の石渡選手と修斗王者の扇久保選手が戦うから、ということですか??
当然2人の肩書きである元パンクラス王者vs.修斗王者の闘いということもあります。でも、これはちょっと個人的な感情が強いんですが、肩書きとかどっちが勝つか負けるか以前に、この二人が日本のこういう舞台で大観衆に見守られて試合をしたっていうところに意義がある、と僕は思っています。
ーーチャーリーさんの「個人的な感情」って…聞いても良いんですか??ドキドキ。
これはただ単に僕が、日本格闘技界に光が当たっていなかった時もずっと軽量級を引っ張って支えてきた二人を見続けてきたので、あの大観衆の前でこの二人が戦ったということが本当に素晴らしいことだと思っている、という事です。本当に愚直にやってきた二人なので、一関係者として「良かった」という思いです。
ーー今日は一段と熱いですねチャーリーさん…!なんだか私も熱くなってきました…!!
この試合に勝ったらタイトルマッチが決定するということはもちろんあると思うんですけど、たぶんそれ以上に本人たちはこの試合に賭ける気持ちが強かったんじゃないかなと思います。
ーーそういえば、扇久保選手の公開練習時のインタビューで、石渡選手とはアマチュア時代も同時期で、プロになってからも同時代を闘ってきたと言ってましたね。
そうなんです。それぞれの団体のチャンピオンになって、あまり光が当たっていなかった当時の格闘技業界で軽量級を支えてきた人達なんです。そんな二人が大晦日の舞台で約3万人の大観衆の前で試合が出来るっていうのは、本当に素晴らしいことだと思うんですよ。
ーーRIZIN.17試合後に石渡選手が「扇久保選手と僕の見分けがつきますか?」と言っていて、髪型とか髭とか確かに似てるな〜と思っていましたが、二人には同じ時代を生き抜いてきたところとか、他にも似た部分があるんですね〜。
石渡選手と扇久保選手の似てる似ていない論がありますけど、家でこの試合を見ていたらウチの3歳のチビ助が「赤いきつねと緑のたぬきだ!きつねとたぬきの試合だ!」って言いながら試合を見ていましたよ。笑
ーー「赤いきつねと緑のたぬき」…??っは!!そういうことか〜!赤いパンツと緑のトランクスってことですね!さすがチャーリーさんのお子さん、目の付け所が違いますね!!
子供の発想は凄いなと思いましたよ。なんだか前置きが長くなってしまいましたが、そろそろ試合を見ていきましょうか。
ーーチャーリーさんの熱い話に耳を傾けすぎて全然本題に入っていませんでした!はい!試合を見ましょう!!
この試合は最終的には『根性の試合』になりましたね。石渡選手は『ミスターど根性』と言っても過言ではないくらい気迫と根性が凄いんですよ。
ーーたしかに!!私が過去に見た石渡選手の試合で印象に残っているのは、意識が無くても立ってパンチを打っている試合です!あれはまさに『ミスターど根性』でした!!
扇久保選手ももちろん、根性ありますよ。前回のRIZIN.17の元谷選手との試合でもド根性を見せているんですけど、扇久保選手はその中でも凄く賢く、頭の良い試合をするなっていうイメージだったんです。そして今回の試合はさらに作戦を綿密に立てて、ちゃんとそれを遂行しているなと思わされた試合でしたね。
ーー今回の扇久保選手の勝因は作戦勝ちということですか?
そうですね、作戦勝ちです。今までの扇久保選手だったら石渡選手に勝てていないかもしれませんが、この日の扇久保選手は凄かったです。
ーーチャーリーさん的には、特にどの場面が凄かったんですか?!是非、教えて下さい!!
普通にタックルに行っても、石渡選手はめちゃくちゃ腰が重いのでなかなかテイクダウンは取れないし、体力も消耗するんです。でも扇久保選手は石渡選手の蹴りを狙って、足を取って倒したんです。
ーーお!!この石渡選手の足を掴んだシーンですね?!
そそそ。待ってました!って感じですよね。これは凄かったです。それと、グラウンドの攻防の後に石渡選手が扇久保選手に背を向けての立ち『際』で、無理に追わずパンチを放つんです。コレです!見ました、今の?
ーーああっ!本当だ!前回の話でムサエフ選手がやっていたものと同じ様な、立ち『際』のパンチですね!!
石渡選手は立ち上がるときに相手に背中を向けながらバックを取らせるんです。扇久保選手はそれで立つんですが、そこから無理に力を使わず、コーナーに押し付けてそこにパンチを放ったんです。そこの『際』っすね。
ーー今回もやっぱりポイントは『際』なんですね!!
これはもう、扇久保選手がそういう戦略だったんだろうなと思います。粘らず無理に体力を消耗しないで、離れ『際』にパンチを1・2発入れてリセットする。いつもの扇久保選手ならあそこでくっついてネチネチやるんですけど、今回はそれをしなかったんです。
ーーたしかに!扇久保選手のイメージって、ネチネチというか、しぶとい闘い方をするイメージがあります!
今回は本当に扇久保選手サイドが相手を研究してきたという感じでした。扇久保選手が冷静に闘って「勝つための作戦」を遂行していたと思います。扇久保選手は本当にRIZINデビューしてから、より魅力的になったと思います。
ーーしびれるような1Rが終了しました!チャーリーさんの前置きがあったお陰でかなりのめり込んで試合を見てしまいました…!
ここまでは互角ですね。石渡選手は漢気(おとこぎ)溢れる人なんで、そこにちゃんと応えている扇久保選手が凄いなと思いました。
ーー私、2R開始早々の場面が凄く好きなんですよ…!!
何かありました?
ーーああーーー!!ここ!ここです!扇久保選手のパンチが入って、恐らく石渡選手の表情を見て扇久保選手が少し笑顔を見せるんですよ。それに対して「もっとやれよ」的なジェスチャーをするところ…!ここが凄く好きで…!!
どっちの選手ですか?たぬき?きつね?
ーーえっと…赤いきつねです!!
ここですか。良いパンチをもらうと「おっ!」ってなるんですよね、きっと。変態ですね、良い意味で。
ーー扇久保選手の試合後インタビューで「本当は打ち合うつもりはなかったが、観客の声援を受け打撃戦になった」と言っていましたが、声援受けて打撃戦をしちゃうこの二人、めちゃめちゃ格好良いです…!!
扇久保選手は本当に、RIZINで闘うようになってからより魅力的な選手になったと僕は思いますね。舞台が人を育てるじゃないですけど、僕には扇久保選手がこういう試合をするイメージがあまりなかったんですよ。
ーーほうほう。
元谷選手との試合や堀口選手との試合もそうだったんですけど、愚直にテイクダウンに行くのが本来の扇久保選手のスタイルだと思っていました。元谷選手と闘って、今回の石渡選手と闘って、攻撃の幅というかバリエーションが増えていて、それは素直に凄いなと思いました。まったくもって予想を裏切られました。本当によく考えてここまでやってきたんじゃないかなと思います。
ーーそうなんですね。チャーリーさんの話に聞きながら試合を見ていたので、完全に見入ってしまっていました!にしても...見てる側も休むタイミングが無いですね…。
扇久保選手が相手に休ませる暇を与えませんでしたね。総合格闘技における全体的な流れが上手く出来ていたのが扇久保選手でした。パンチからテイクダウン、テイクダウンから立つ、立って離れ『際』のパンチ。この流れるような試合ができていたのが扇久保選手。そこに差が出たんじゃないかなと思います。
ーーなるほど。そのお話を聞いて3R目を見ると、扇久保選手は確かにその流れを行っていますね!
そうなんですよ。ミドルキックを2発蹴ってテイクダウンに行ったんですが、ダメだったので離れ『際』にパンチを一発入れて、またすぐテイクダウン行くっていう。
ーーおおお!本当だ!!そしてここで石渡選手を持ち上げてのサッカーボールキックがしびれましたっ!!きゃーー!
この流れるような動きが素晴らしかったです。その後、また扇久保選手が石渡選手のバックを取るんですが、バックを取るのが扇久保選手は得意ですよね。
ーー蹴ってすぐ飛びつきましたね!!素早いっ!!
ただ、石渡選手が扇久保選手の足を抑えているので完全に後ろへは行かせなかったです。
ーー足を抑えて…??えーー!?どこですか??!もう一回見ても良いですか??!
どうぞ。要は、扇久保選手が絡ませた足の間に石渡選手が腕を入れて、後ろに回させないように抑えているんです。
ーーあーーー!本当だ!!チャーリーさんに教えてもらわなかったら全然分かりませんでした…!
足との隙間に腕を入れているから、扇久保選手を前に引っ張ることが出来て、扇久保選手は前に落ちたんです。一瞬の攻防ですね。あの手がなかったらあのまま扇久保選手はズルっと後ろに行っていました。
ーー扇久保選手を前に落とした石渡選手はここで何かをしようとしていたんですか?
もちろん、石渡選手はここで何かやりたかったですよね。パウンド落としたり。でもここは扇久保選手が上手かったです。ここで休まない。扇久保選手は立った後もすぐ前に出ていって相手を休ませなかった。もうこれで石渡選手はド突き合いモードですよ。
ーー私もなんとなく、もう3R目だしここでちょっと一呼吸置くのかなと思ったんですけど、全然一呼吸する間がなかったですね。
そうそうそう。そのまま扇久保選手がしつこく行って、相手を休ませず追いかけるから、石渡選手は突き放さなきゃいけない。3R目は残り1分半くらいからノンストップで動き続けてますから、もう根性ですね、意地。
ーー本当、最後までこのままずっと打ち合ってますよね。二人ともすごい体力ですね…!
そうなんですよ。3R目なんか膠着(こうちゃく)していないじゃないですか。石渡選手が一呼吸置きたかったのに扇久保選手が粘って粘って、立ち上がったと思ったら休む暇なくすぐ打ち合いに行って、その後ずっと2分くらい打ち合ってるから凄い運動量ですよ、半端じゃない。だから『根性』です。
ーー漢と漢の打ち合いって感じですね…!私、目頭が熱くなってきちゃいました…うううっ!!
英語だと今のような殴り合いのことを「Phone booth」と言うんです。二人とも足を留めて手を振って殴り合う。
ーーふぇ??...ふぉ、ふぉんぶー…??
「Phone booth」。電話ボックスです。
ーーへーーーー!そんな風に言うんですか?!
要は電話ボックスみたいな狭い空間で殴り合うしか無い、みたいな。
ーーそれは格闘技の用語なんですか?
用語というか、そういう表現ですね。電話ボックスで殴り合っていると言うか、蹴りも出さない足も動かさないパンチだけっていう状態を「Phone booth」と言います。
ーー勉強になります!次にこういう場面を見たらドヤ顔で「Phone booth」って言ってみます!!
それでドヤらないで下さい。でも、最後10秒の拍子木を聞いてからギアを上げられる選手って、やっぱり本当に魅力的ですよね。
ーーあの10秒って、なんだか不思議と惹きつけられる時間ですよね。倒すか倒されるかみたいな、すごくドキドキします!!
こうやって改めて見ると、やはりこの試合も『際』を取って前に出て行った扇久保選手の勝ちですね。要所要所の『際』を制したかが勝敗を分けたと思います。
ーー今回チャーリーさんと試合を振り返って、その『際』の重要さが分かりました!
扇久保選手はその辺の作戦をしっかり練って来たんじゃないかなって思います。そこの上手さで勝者になれたんじゃないかなと。最終的には、もう根性勝負みたいな展開でしたが、この試合は二人の魅力がたっぷりと出た試合だったと思います。勝ち負けはありますけど、こういう試合をすると負けても評価は下がらないですからね。
ーー負けて評価が上る人っていますよね。そういう選手って、やっぱり最後まで粘ると言うか、最後まで勢いが死んでないところに心が動かされる感じがしますね!
そうですね。石渡選手の場合は評価が上がったっていうか、もう「ザ・石渡」っていうような試合でした。
ーーその石渡選手に勝った、扇久保選手。そのド根性も称えるべきですね…!
この扇久保選手とマネル・ケイプがタイトルマッチをやるわけですよ。ケイプ相手に今回のような試合をしたらどうなるか分からないので、そこはまた作戦を立てて来るんじゃないでしょうか。
ーー次回のバンタム級タイトルマッチ、いったいどうなるのか私には全く分かりません…!!
このタイトルマッチに関してはまだまだ伸び代があって、格闘家としての幅を増やしているマネル・ケイプと、RIZINの舞台に上がることによってある程度完成されていたスタイルからさらに幅を増やした扇久保選手、この二人がどんな闘いを見せてくれるのか。楽しみですね。
ーー私もすごく楽しみです!!でも、たくさんいるバンタム級選手の勝敗の相関図を作ったとしても、今後の展開がまっっっったく予想つかないですね…!
そうっすね。まさに『格闘技じゃんけん』あるあるですよ。
ーーか、『格闘技じゃんけん』?なななんですかそれ???
え?『格闘技じゃんけん』ですよ。
ーー当たり前みたいに言ってますが、私、初めて聞きましたよ『格闘技じゃんけん』!!
グーチョキパーで、グーはチョキに勝つけどパーに負ける、チョキはパーに勝つけどグーに負けるじゃないですか。
ーーああー!!そういうことですか〜!!ようやく分かりました!!
パーはグーに勝つけどチョキに負けるっていう。グーはどれだけ強いグーを出してもパーには負けるんです。まさにそんな感じじゃないですか。相関図がぐちゃぐちゃ過ぎて、もはやわからない。
ーーたしかに。大晦日の朝倉海選手なんて、そういう意味で言ったら、マネル・ケイプ選手には負けない図式になるはずでしたもんね…。
朝倉海選手を中心に考えたら、堀口選手・憂流迦選手に勝っているから、堀口選手・憂流迦選手に負けているマネル・ケイプに負けるわけが無いじゃないですか、普通に考えたら。でも朝倉選手は負けてしまった。じゃあマネル・ケイプが堀口選手ともう一度闘ったら勝てるかと言ったら、たぶん分からないですよ。
ーーなおさら今後のバンタム級の予想がつきません...!!ん〜〜、でもだから楽しみっ!!
そういうのもあるから盛り上がりますよね。バンタム級の役者が揃ってきたから面白い。
ーー2月の浜松大会ではさらにバンタム級の参戦選手が増えるのでとっても楽しみです!!
そういった混沌としたところにビクター・ヘンリー、トレント・ガーダム、そして金原正徳選手や井上直樹選手が入ってくるのでさらに熱いですよ。金太郎選手、加藤ケンジ選手にもここに食い込んでもらいたいですね。とても面白くて良いと思いますよ。
ーーそうですね!さて、次は2月の浜松大会に向けてお仕事頑張らなきゃです!!
そうですね、もう開催まで1ヶ月を切ってますから。盛り上げていきましょう!!
ーーでは、今回の振り返りはこの辺で!浜松も楽しみだな〜♪ 浜松餃子に浜名湖うなぎ、さわやかのげんこつハンバーグ♪ ♪ ♪
そっちかーーーい!!!
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