「DREAMの最初の頃とか『カッコいいとこ見せなきゃいけない』って固定概念みたいなのがあったんですよ。でも、『もうカッコつける必要ないからすべてさらけ出しちゃえ』みたいな。それで自分の中でも凄いラクになりましたね」
――4月16日、RIZIN第2戦が決まりましたね。
川尻 そうですね。まず出られてよかったかなと、枠は少ないと思っているので。自分からアピールしといてよかったです。
――年末のクロン・グレイシーとの試合直後は気持ちが折れていた感じがしました。
川尻 うーん……そうですね。ボクが辞めるどうこうじゃなくて、必要とされなくなったらファイターっていう職業は終わりだと思っているので。プロ野球の戦力外通告と一緒ですよね。「おまえはもう必要ないよ」って言われたら闘う場を失って、職を失う。そういう意味ではクロンとああいう試合をした直後は、この先RIZINに必要としてもらえるのか、ファンに必要としてもらえるのかなって思いました。でもそのあとに榊原代表のツイートを見たら、「落ち込んでる暇はない」って書いてあって、それを見て気持ちを切り替えて、「とりあえず走っとくか」って感じですぐ始動しましたね。
――もちろん勝負は勝つか負けるかなんですけど、川尻選手の年末の試合は負けはしましたが伝わってくるものがありました。
川尻 まああと付けでね……大きな視野で見ればそれも凄い理解できるんですけど。でも、ファイターとしては「勝ちがすべてだ」っていう気持ちがあるので、負けた直後は自分の中で落としどころがなかったですね。
――川尻選手は長年格闘技をやってきましたが、試合に向かう姿勢は変化してきましたか?
川尻 そうですね。いまでも闘う一番の理由は反骨心というか、「この野郎、いまに見てろよ!」っていう気持ちが強いんですけど、昔に比べてなかなか自分だけの気持ちだけでは着火しづらくなってきてますかね。ほかのファイターの先輩たちの闘いとかを見て、「俺もまだまだこんなところで燻ってる場合じゃないな」とか。会見でも言ったけど新しいモチベーションとして「娘に強いところ見せたい」っていうのもあるし、昔に比べていろんな闘う理由が必要になったし、いろんな闘う理由が出てきたかな。少し前までは私利私欲だけで闘ってた。
――前というとUFCで闘っていたとき。
川尻 はい。正直UFCまでは家族がどうとか関係なくて、俺がやりたいことやって家族に迷惑をかけてるだけだと思ってたんです。でもいまは娘への想いもモチベーションのひとつになってるんです。
――その気持ちはいつ頃変わったんですか?
川尻 RIZINに帰ってきてからですね。それまでは考えたこともなかった。
――へえー。丸くなったとは言わないですけど、川尻さんは昔と比べると発言や行動がだいぶ変わったなという印象がありますね。柔らかくなったというか(笑)。
川尻 ハハハハ! そうですね(笑)。昔はけっこういろいろ好き放題言ってたりして、自分でも怖いイメージがあるだろうなって凄い思います。普段めっちゃ好青年なんですけどね(笑)。
――好青年(笑)。
川尻 ボクが30代半ばにさしかかったときに観ている人たちに伝えたかったのは、「特別じゃないんだよ」っていうことなんです。まあ、特別な人間もいるけど、少なからずボクは、試合前は怖いし、ビビるし、練習きついの嫌だなって思うときもある。だって普通の人間なんで。リングを降りれば、家族がいて、いろんな悩みだったり迷いだったりがある。その中で、それでも格闘技が好きでこの歳になってもガチンコで18歳の天才・那須川天心くんとかと同じ土俵で一緒に争ってる。そういうことをたくさんの人に知ってほしい。自分がファンとして観てたときは、やっぱりリングに上がってる人って特別な存在で、凄い強い人たちなんだなって思ってた。けど全然ボクはそんなことなくて、観てる人と一緒なんです。強くなりたい。強くなろうとするからこそ必死に強がってるというかね(笑)。そういうのも、もうさらけ出していいかなって。
「絶望を3回味わってるんで。覚悟はできてます」
――変わってきているんですね。
川尻 そうですね。昔はそういうの隠して……、隠してっていうかカッコつけて強い自分ばっかりアピールしてたけど、もうそれもいいかなっていうのを5、6年前から思うようになったんですよね。
――経験と歳を重ねていまの気持ちになったんですね。
川尻 そうですね。やっぱりカッコつけて、「ファイターは強くなきゃいけない」とか「カッコいいとこ見せなきゃいけない」って固定概念みたいなのがあったんですよ。DREAMの最初の頃とかそうやってがんばってきたけど、「俺こういうキャラじゃねーよなあ……」って思って。「もうカッコつける必要ないからすべてさらけ出しちゃえ」みたいな。それで自分の中でも凄いラクになりましたね。
――先日の記者会見で「いつ辞めてもいい覚悟でリングに立つ」とおっしゃっていましたが。
川尻 そうですね。ボク、目の手術3回してるんですけど、その度に「もう無理だな」って思ってきたんです。絶望を3回味わってるんで。覚悟はできてます。
――もう辞めようという気持ちは3回とも喉元まで出かかっていた感じですか?
川尻 3回目はもう出ちゃいましたね。同じ時期に格闘技始めてずっと一緒にやってきた練習仲間の年上の先輩がいるんですけど、その人にもちゃんと「もう辞めようと思います」って伝えて。嫁には一番最初に電話をしたんですけど、「こういう結果になったから、もう引退しようと思う」って。
――でもそういう経験をされているからこそ、川尻さんの試合からは何かの覚悟が伝わってきます。
川尻 そういうのが伝わればいいかな、っていうか、ボクの役割はそういうところかなのかなって思ってます。手の届かないとこにいるのは、天心くんとかRENAちゃんに任せて(笑)。ボクは「普通の人もがんばってます」担当で。
――かつては川尻さんもそういう位置に確実にいたじゃないですか。
川尻 必死に、そう演じてただけですけどね(笑)。ボクは昔からそういうタイプじゃないな。
――その経過を見れるのも、ファンとしてはひとつのおもしろさだと思います。
川尻 ああ(笑)。だいぶ表現の仕方が変わりましたね。自分の中で。
――川尻さんがやり続けている限りずっと見れるわけですからね。
川尻 それはありがたいです。ずっと見てくれて、理解してくれるファンはありがたいですね。
――ありがとうございます! 4月16日楽しみにしています!
川尻 はい。絶対素晴らしい大会になると思うし、ボク自身ももう一度蘇って、笑顔でファンのみんなと帰路につきたいと思ってるので、ぜひ会場まで応援にきてください。よろしくお願いします!
<RIZIN 2017 in YOKOHAMA 大会概要はこちら>
http://jp.rizinff.com/_ct/17028393
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