斎藤裕「僕らMMAファイターはこういう試合をデビューの時からやってきた」
——試合後の率直な感想をお聞かせいただけますか。
斎藤:いや、何回勝っても嬉しいですね。試合で勝つともう何戦……、30戦以上やってきてるんですけど、いつ勝っても嬉しいですね。久しぶりなんですけど、皆さんの声援に感謝しますね。
——対戦相手と実際に戦った印象を教えてください。
斎藤:そうですね。MMAファイターとしてキャリア積んできていて、試合のたびに良くなってるなあっていうのは感じてはいたんですけど、実際やってみてエスケープ能力も高いし、結構バックポジションまで行ったら極めれるって思って試合臨んだんですけど、そこまで行けなかったのはちょっとディフェンス能力の高さと気持ちの強さを感じましたね。自分はまだまだ甘いなっていう。はい。
——試合を終えたばかりですが今後の展望・目標を教えてください。
斎藤:いや、もうないですよね(笑)、ないというか、とにかくこの試合に全ても集中してたんで、これ勝ってどこに進もうとかっていうのは今パッと浮かぶのはないんですけど。もうお店もやってしまってるんで、1試合やるのにたくさんの人に迷惑かけて、たくさんの人の理解を得て試合に行くっていうところで、とりあえずはこの勝利をみんなで喜びたいなっていう気持ちが強いです。
――顔のダメージがあまりないように見えます。何か受けたという印象はあります?
斎藤:パンチによるダメージ何回か交錯はあったんですけど、効いたようなパンチと蹴りはないので、ノーダメージ……、うん。まあ色々痛いとこありますけど、顔は大丈夫っていう感じですね。
――試合前には“濃厚豚骨無双”のようにドロドロのMMAをというお話でした。ご自身の中では宣言通りやれた手応えはありますか?
斎藤:超濃厚だったんじゃないかなと思うんですけど、どうでしょう?
――だったと思います。YA-MAN選手が一番濃厚さを味わってると思います。
斎藤:やっぱりね、キックボクシングからMMAっていう流れがあるなかで、僕らMMAファイターはこういう試合をずっとデビューの時からやってきてて、修斗の試合をちょっと思い出しましたよね、今日の試合は。今はケージでやってる試合がほとんどですけど、修斗の試合は。「俺はこれをやってきたんだ」っていう。そういう気持ちはあります。
――前回YA-MAN選手と戦った金原選手など、YA-MAN選手に乗せられるようにして、喧嘩に付き合うみたいな形で負けるパターンの選手も多かったと思います。斎藤選手は「そこには絶対乗らない」という作戦だったのでしょうか。
斎藤:そうですね。僕は朝倉未来選手とか平本蓮選手やってきてるんで、人に、選手にのまれるってことはないと思ってますね。だから自分の、今回松さんと本当一緒に戦略とか練習とか作ってきて、ほぼプラン通りというか、こういう風にやれば勝てるよっていう試合をYA-MAN選手と対峙して、できたなっていう風に思ってるんで、会場にのまれることもなく、相手に左右されることもなく、自分を出していくっていうことが勝因だったかなと思ってますね。
――戦前「魂の全てをリングに置いてくる」とおっしゃいましたが、それはしっかりとできましたか?
斎藤:そうですね。できることはやったかなとは思うんですけど、お客様、皆さん見てる方に少しでも伝われば嬉しいなというか。試合って水物なんで、全てを砕け散るつもりで行くっていうよりは、やっぱりファイターとして勝つっていうこと、それが何よりも大事で、その中で相手とのその相性だったり、噛み合い、試合になってやれれば一番いいんですけど、あの、自分を失わないでやったっていうところで行くと、僕自身が反省はありますけど、勝ったことに関しては満足してますね。はい。
――修斗の頃を思い出したという言葉がありました。やっぱりあの頃とMMAがすごく変わって進化してる中で、今回の試合やり切れたってことは正直すごいことだと思います。これをやるために沖縄に行って、松根良太のもとで、このMMAをするために向こうを選んでこれをやってきたということでしょうか。
斎藤:はい。僕は18歳から格闘技やって20年やってるんですけど、MMAにもトレンドがあって、その時代時代で勝ってきた選手たちが、例えばストライカーの時代があったり、柔術の時代が来たり、レスリングの時代が来たり。MMAは組み合いの競技だと僕はずっと思ってやってきたんで、RIZINに参戦してね、ストライカーとかスタンドの得意な選手との対戦っていうのが増えるんですけど、僕がやってきたMMAはもう、組技ありきでいろんなものが進んでいく。で、自分にもまだまだ足りないものがあるし、松根さんにそういう意見を仰ぎながら、いろんな指導をしてもらいながら、僕がMMAの完成形に近づけるんじゃないかっていうのを、去年の大晦日は流れちゃったんですけど、そのために行った時にすごくいいなと思ったんで、今回も試合前行って、さらにもっと良くしようと思って行ったのが、今回良かったなと思ってますね。
――今日の試合はアマチュア修斗でも勝てる試合だなと自分の界隈では感想が出ました。
斎藤:まあ、僕はアマチュア修斗30戦ぐらいやってますから。いろんな団体あるんですけど、修斗で勝ち上がっていくのって本当に大変で、今、昔もう大変な時代あったんですけど、今も勝ち続けること、勝ち続けてチャンピオンになるのって本当に難しくて、やっぱりこういう組技の技術とか寝技の技術がない選手はどっかで負けてしまうっていうのがあって。まあ自分も一応チャンピオン経験者として、いろんな戦いを経てきてますけど、アマチュアから積み上げてきたものを、まあひとつ、こういう舞台で見てもらえたっていうのは、修斗関係者の方たちはすごく鼻が高いと思います。
――リング上で、マイクで話されていた時に、少し感極まったような瞬間もあったようでした。率直にどういう思いが大きかったですか?
斎藤:まあ、そうですね。あの、うん。ここまで選手を続けてくるとですね、試合をするのにいろんな理由がないとなかなか立ち向かえないって思うことが多いんですね。で、応援してくれる皆様は、「自分のことだけ考えて」っていつも言ってくれるんですけど、僕はもうみんなのために、いろんな人に支えられてここまでやってきたっていうのがあったんで、勝ってお礼を言いたかったっていうのが、現役選手としては、それが一番正しいという気持ちですね。
――区切りになるというようなことも。試合を終えて、改めて、すぐ「次」ということは現状は考えられない状況でしょうか。
斎藤:そうですね。この場で言うのもアレなんですけど、10月に、麺ZINさいとう2号店っていうのが、目黒にオープンすることが決まってまして、多分選手としてじゃなくて、お店はお店ですごいスピードで多分広がっていくっていうのもあって、なかなか「じゃ、次いつやる」ってね、すぐ言えない状況ではあるんですね。年齢もあるし、心も体も昔とは全然違ってきてるっていうなかで、とにかく今回試合をすること、皆さんの前でやるっていうことがすごく自分の中で意味のあることだから、先のこと、本当に申し訳ないですけど未定というか。
――金原選手がテイクダウンしてもなかなか押さえ込めなかったYA-MAN選手をテイクダウンしてバックを取れた、あのボディトライアングルは、沖縄での練習の成果でしょうか?
斎藤:そうですね。まあ、テイクダウンは取れるとは思ってはいたんですけども、一番大事なのは、立ち合いで負けないことっていう、リングで立ち合った時に自分が退がらされてしまうと、テイクダウン行くにしても良くない、いい組み手作れないっていうところで、それは松根さんに細かい技の指示や指導もしてもらったんですけど、ボクシングスパーをずっと積んできたっていうので、立ち合いで負けなかったのがすごく大きかったなと思いました。
――協栄ジムでの出稽古ですね。
斎藤:はい。
――麺ZINさいとうは、出前もやってるんですか?
斎藤:出前?あ、煽り映像ですか?出前はやってないんです。すみません(笑)。
――ではこれから可能性は?
斎藤:えっと、2号店がつけ麺専門店になるんで、通信販売はする予定ではあります。冷凍販売ですね。
――(地元秋田の新聞より)改めてこの試合にかけた思いをお聞きしたいです。1ヶ月前に取材させてもらった時「勝てば続くストーリーもあるし、繋がる道もある。負けると、思っていた選択肢が消えていく、それが格闘技だ」とおっしゃっていましたけども、やっぱりこのYA-MAN戦にかける思いっていうのは、負け方や内容によってはもちろん、引退の可能性も出てくるような強い思いで挑んだということで、よろしいですか。
斎藤:そうですね。自身のYouTubeチャンネルの密着でも色々話したと思うんですけど、僕の中でやっぱり勝ち負けのその結果ありきでストーリーって、ついていくものだと思ってて。負けても、なかったかのようにしてやるっていう選択もあると思うんですけど、自分がやってきた格闘技はそれではなくて、しっかり結果にこだわりつつ、だから勝つことが大事なんですけどね。だから今回も、京セラドームで試合するなんて、次いつか分からないじゃないですか、興行が。だから激しい試合、派手な打ち合い、それを望むお客さんもいると思うんですけど、YA-MAN選手と対峙した時に自分が勝てる可能性のあるものっていうので、試合をすることができたんで、もう勝ったことが全てですよね。
――入場前のVTRでも、お母さんがエールを送ってくれたかなと思うんですけども、実際ご家族とか、秋田の地元の昔の知り合い、そういった方々の応援の力はこの試合にどう繋がりましたか。
斎藤:そうですね。両親には心配ばっかりかけてますよね。でも佐藤(大輔)さんの映像は、多分うちの母親からしたら一生の思い出になるんじゃないかなって。僕ちゃんと見てないんですけど、さっきちょっとメッセージ入ってて、そういう意味では佐藤さんに感謝だし、ああいう、試合に向けて、みんなの気持ちを高めてくれる映像ってのはやっぱRIZIN素晴らしいなと思います。
――お母さんからはどんなメッセージが?
斎藤:「佐藤さんに、よろしくお伝えください」と。
――今日は平日開催で、秋田の方がどれだけ来られたかは分からないですが、来れなくてもPPVできっと応援してくれたと思います。改めて秋田の方に一言メッセージをいただけますか。
斎藤:そうですね。自分が戦う姿を見て何かをプラスに感じてもらえるのがすごく嬉しいですよね。プロの選手として、僕のこと知らない人も県内でたくさんいると思うんですけど、だいぶRIZIN出てからはいろんな方面から連絡も来るようになったし、自分が活動することでプラスに何か働いてくれたらすごく嬉しいなと思います。秋田県が盛り上がるのは嬉しいですよね、僕は。いつも応援ありがとうございます。
――先ほど麺ZINさいとうのお話が出ました。トレーニングをしながら、試合に向かう選手としての生活に比べて、麺ZINさいとうの経営には、やりがいがあるとか、大変であるとか、比べると、どういう感じなのですか。
斎藤:選手として試合に向かっていくってのは多分自分と向き合うってことがほとんどだと思うんですよね。職人じゃないですけど、突き詰めていく。勝つために突き詰めていく。お店の進め方っていうのは、僕ひとりの意見ではなくて、こう、みんなで同じ方向を向かないとっていうのがあって、特に飲食店なんで、人がいないとどうにもならないものですから。だから、そこですよね。で、年下もいれば年上もいたし、僕、結構中間な感じなんです、年齢で言うと。だからみんなで進めることは難しいなと日々感じてますよね、はい。でもやりがいはめちゃめちゃあります。僕、結構そういうチーム戦好きなんで。運動会みたいなの大好きですから。
――麺ZINさいとうを経営するためにパーフェクトな環境があったとして、一方には選手としての自分の全盛期があったとして、どっちかを選ぶとしたら、どちらを取りますか?
斎藤:間違いなく全盛期を取りますね。選手としてできる時間は本当に人生の中で限られてると思ってるんで、うん。試合をするとやっぱり学びが多くて感じることも多いんですけど、今回もたくさんのことを学んで、たくさんのことを感じて、選手続けてきてよかったなって勝って思えるんですよね。だから全盛期、まあいつなのかわかんないけど、うん。できる時にやった方がいいですね、選手は。
――9月にラーメンのイベントがあるのですよね?
斎藤:『熱狂中野ラーメン祭2026』ですね。9月25日から27日、3日間、中野のラーメンフェスに出店しますんで、よろしくお願いします。
YA-MAN「斎藤選手のタックルにビビりすぎてた」
——試合後の率直な感想をお聞かせいただけますか。
YA-MAN:そうっすねえ……、何もできなかったっすね。完敗です。
——対戦相手と実際に戦った印象を教えてください。
YA-MAN:職人だなって思いましたね。なんかもう自分のやることを徹底して、それを突き通す、職人技にやられました。
――先ほど何もできなかったというお話もありましたが、どういった戦略で本来は挑むはずだったんでしょうか?
YA-MAN:戦略としては、金原正徳さんとの試合のような戦略では考えていたんですけど、思ったよりもやっぱレスリングがすごいうまくて。切り替えがちょっと速くて、そこに対応できなかったですね。
——試合を終えたばかりですが今後の展望・目標を教えてください。
YA-MAN:やることは見えてるんで、そこをもっと重点的に練習して、次、成長した姿を見せられるように頑張りたいと思ってます。
――先ほど何もできなかったというお話でした。一番最大の誤算はどこにありますか。
YA-MAN:そうっすねえ……まあちょっと多分、過信ですかね。自分の力をなんか、金原さんの寝技を凌げたから大丈夫だろうっていう、たぶん誤算がありましたね。誤算というか過信ですね。練習をしなかったわけじゃないですけど……、まあ、過信がありましたね。
――今回も1ラウンドから寝技は凌いで極めさせなかったことを自分でどう評価しますか。
YA-MAN:極めさせなかったっていうのもあるとは思うんすけど、極めに来なかったってのもありますよね。多分、本当に勝ちに徹しというか、あんまり力を使わないようにしていたんで、極められなかったというよりも、多分そこまでこだわってなかったんじゃないかなと思います。
――試合前に斎藤選手のことを、気持ちの強い選手と分析していました。実際に試合をやってみてそこの点についていかがでしたか。
YA-MAN:やっぱ最後まで力を抜かないというか、やっぱ3ラウンド目はすごい疲れているってのは感じていたんですけど、もう徹底的に、気持ちで絶対立たせないぞっていう気持ちでやられましたね。気持ちと技術っすね。そこがやっぱ強かったっす。
――YA-MAN選手にとっても、久しぶりの試合ということで、試合前には成長しているワクワクと、試合感覚を忘れていないかっていう、不安もあるということでした。そのメンタル的なところは、入場の時や試合のゴングが鳴った瞬間、いかがでしたか。
YA-MAN:まあ、なんか「戻ってきたな」っていう感覚はあるんですけど、やっぱ攻めあぐねましたね。ビビってたんですかね。うーん、そうっすね。行けなかったっすね、多分。うん。行けなかったっす。
――それは試合感覚っていうのもどこかで影響していたかもしれない?
YA-MAN:いや、それ……、うん多分、斎藤選手のタックルにちょっとビビりすぎてたなっていう。本当はもっとプレッシャーかけて行こうとは思ってたんですけど、やっぱファイトIQも高いですよね。やっぱこう、前に来させられた。自分が前に出たんじゃなくて誘われたっていう感じでしたね。
――RIZINの元チャンピオンとやってみたことで、自分としての成長であるとか、戦いの今後へのモチベーションとか、試合終わった直後ですが、何かそういう部分に響くものはありましたか?
YA-MAN:そうすね。自分にちょっとガッカリしたっすね。「こんなにできないんだ」って。もっとできると思ってたのに、ちょっと自分にガッカリしてるんで、練習するしかないっすね。ちょっとそうですね、今はなんか「誰々を倒す」とか、そういうポジションじゃないのかなって思うんで、次の試合に向けてMMAを技術を上げることしか考えてないっすね。