格闘技観戦 初心者の雷美(らいみ)が、RIZINマッチメーカーのチャーリー氏とともに、試合の攻防や技などを教えてもらいながら“これを読めば格闘技観戦がもっと楽しくなる!”を目指して見どころを紹介していく企画、それが「教えてチャーリー!」。

皆さんこんにちは!雷美(らいみ)です!最近あたたかくなり春の気配を感じ始めてきましたが、皆さんいかがお過ごしですか?

この「教えてチャーリー!」は、格闘技初心者の私が、RIZINマッチメーカーのチャーリーさんと一緒に“これを読めば格闘技観戦がもっと楽しくなる!”を目指して試合を振り返っていく企画です!

2020年の幕開けとなったRIZIN.21!浜松初上陸ということもあり静岡や愛知出身の選手も多く参戦し、メインイベントでは朝倉未来選手が宣言通りのKO勝利!大盛り上がりで幕を閉じましたね。その興奮さめやらぬうちに浜松大会のおさらいをしようと、今回も早速チャーリーさんのところへやってきました!

ーーチャーリーさんお疲れさまです!今回の浜松大会も熱〜い試合が繰り広げられていましたね!!
どうも雷美さん、お疲れさまです。

ーー今回もRIZIN.21の振り返りをしてもらおうとチャーリーさんのもとにやってきました!早速、振り返りを…やらまいかーーーーっ!!!
……???

ーーちょっとチャーリーさん!!そこは一緒に「おいしょお! 」って言ってくださいよ〜!
いや…ええっと、なんですかそれ…??

ーーもー!チャーリーさん知らないんですか??浜松含む静岡県西部の遠州弁で「やろうよ」って言葉を「やらまいか」って言うんですよ!
へ、へぇーそうなんですか…全然知りませんでした。どこで覚えたんですか?その言葉。

ーー浜松駅前の居酒屋です!
へぇーーー…。で、今回は雷美さん的にはどの試合が気になったんですか?一つずつ見ていきましょうよ。

ーー…はっ!そうでした!今回も注目の試合ばかりだったんですけど、まず私がお話を聞きたい試合はトレント・ガーダム選手と井上直樹選手の試合です!!
ほぉ、そこ来ましたか〜。これはね、凄く良い試合でしたね。

Full Fight | トレント・ガーダム vs. 井上直樹 / Trent Girdham vs. Naoki Inoue - RIZIN.21

youtu.be

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ーーこの試合はとても凄い試合でしたが、試合を終えた後のインタビューでトレント・ガーダム選手が判定に怒りをあらわにしていましたね…
大会後、SNS上でも勝敗についてファンの意見が分かれていたようですね。確かに意見が分かれる試合だと思いました。ちなみに雷美さんはどっちだと思いましたか?

ーーえ、私ですか??私は井上選手かな〜と思いました!
なんでですか?

ーーん〜そうですね〜、1R目はどっちとも言えないですけど、2R目は井上選手が寝技で相手をコントロールしていたかな〜という印象が大きくて、3R目はトレント選手が主導権を握っていた印象ですがそれは最後の方だったので、それを差し引いてもトータルで井上選手かな〜...と思いました!!
…あ、あれ雷美さん、僕はもっとこう「とりあえずヤバかったのは井上選手!」くらいのコメントを予想していたのですが…この企画を通してそこまでコメントできるようになったんですね。

ーーえ?そうですか?!これってもしかして...チャーリーさんに褒められている!??
いいえ。雷美さんはRIZINの人間なんですから、それくらいコメントしてもらわないと困りますね。

ーーく〜〜っ!!チャーリーさんは相変わらず厳しいですね!もっと勉強しますっ!!
はい、頑張ってください。さて試合の話に戻りますが、この試合は井上選手の動きが凄く良かったですね。

ーー試合後のインタビューでトレント選手は唯一「ジャブが上手かった」と、相手のジャブだけは認めていましたね!井上選手も「セコンドにアドバイスされて打ったジャブがいい感じに当たった」と言っていました。
この井上選手のジャブでトレントは自分の距離にさせてもらえなかったんですよね。井上選手はあくまでも自分の距離を相手に押し付ける、そういうジャブでした。

ーーへぇ〜!そういえばこの試合のゲスト解説の朝倉海選手も井上選手のジャブを「テクニカルなジャブ」と評価していましたね!
トレントは自分の距離が作れないから先に仕掛けられなかったんですよ。近すぎると気持ち悪いし、距離を取らなきゃいけない。「下がれコノヤロウ!」って感じで打つしか出来なかった、でもその中でトレントはちゃんと返しているんですよね。

ーーなるほど〜、トレント選手のあのパンチにはそんな思いが込められていたんですね…!
たぶんですけどね。井上選手がすごいのは、トレントの打撃をもらいながらも前に出て行ったところですよ。これはすごいなって思いました。

ーー鼻血が出ているのにガンガン前に出ていきますね…!うう…痛そう、だけど凄い!
でも1R目は二人とも様子見って感じでしたね。探り合いって感じでした。

ーーああーー!残り1分というところで井上選手のタックルから寝技の攻防になりました!
これは流れから行きましたよね、上手いですよやっぱり。でもトレントもすぐ返しています。

ーーくるくる回ってどっちが有利なのか…私にはもう分かりません!!
トレントは体幹が強いんでしょうね、バックを取られた時、相手との間に空間作って振り向く練習をしてきたんでしょう。トレントは自分が打撃の選手と分かっているから、寝技の状況になった時に返す方法を強化してきたんじゃないかなと思います。

ーー1R目が終了しました…!なんというか、早いし目まぐるしいし、すごい試合です…!
ユニファイドルール(UFCなど多くの総合格闘技団体が採用している)のジャッジでも、これは難しいですね。

ーー去年の教えてチャーリー!で教えてもらいましたがRIZINのMMAルールでは、そのユニファイドルールとは違って、試合全体を総合的に評価するんですよね!
そうです。RIZINのMMAルールはトータル評価なので、この1ラウンドだけをユニファイドのように10−9みたいな採点はしません。ただ、どちらか一方を選べと言われれば、常に前に出ていた井上選手にやや分があるかなという感じです。

ーーこの試合でも解説の朝倉海選手が「(二人とも)技を掛けられたときの対処が上手い」と言っていましたね〜。
そうそう。逆に言うとさっきのテイクダウンはあんまり評価できないと思います。

ーーえ!?そうなんですか??なんでですか??
テイクダウンしたけど結局何もしないで返されちゃったじゃないですか。昔だったらテイクダウンする事自体が評価されていましたけど、昨今の評価基準だと「テイクダウンしても何も出来ない、相手を支配できていない」とみなされて、プラス評価されないんですよ。

ーーへ〜!そうなんですね!!
分かりやすい例で言うと、堀口選手とダリオン・コールドウェル選手がニューヨークで戦った試合の判定ですね。あれもコールドウェル選手が再三テイクダウンをしましたけど、そこからコールドウェル選手は何も展開を作れなかったので、結果的には判定負けだったじゃないですか。あの試合は、現行の評価基準がよくわかる試合だったと思います。

ーーということは先程のテイクダウンを含めた目まぐるしい寝技の攻防より、前半の井上選手が打撃で前に出て行ったことの方が評価されるってことなんですか??
判定としては打撃も寝技ももちろん均等に評価されると思いますよ。ただ、最近は「打撃の方が評価される」という傾向は明らかにあると思います。

ーーふ〜〜ん、なるほど!チャーリーさんのお話聞くと勉強になりますね!
それにしてもスクランブルも早いし、本当にすごい試合ですよ。膠着しないし。それをやりきれるスタミナもちゃんとある。すごい選手たちだと思いますよ。

ーーお!続いて2R目が始まりました!そういえば井上選手で思い出したんですが、Twitterの@rizin_Englishで井上選手の髪型を「Pom Pom hair」って言ってたんですけど、海外ではそういう風に言うんですか?
...いや、僕が適当に言いました。

RIZIN FF English on Twitter

twitter.com

ーーえ!?そうなんですか??海外では「Pom Pom hair」って言うのか〜って、私思っちゃっていました!!
いや、僕が勝手に命名しました。チアリーダーが持ってるポンポンみたいじゃないですか。

ーーあ!!そういうことか〜!!
「ボンバーヘッド」じゃ多分、海外に通じないんじゃないですか?「ボンバーヘッド」って和製英語ですよね。おっと、そんな話をしている間に、寝技の展開になりましたよ。

ーーキャーーーー!大事な場面を見逃すところでした!!井上選手がバックを取りました!でもトレント選手の抵抗も凄いですね〜!
トレントが振り向こうとしているのに井上選手が合わせてますね。トレントは両手で井上選手の片腕をコントロールして極められないようにしているんですが…

ーー井上選手の腕がトレント選手の首に絡みつきました!!こ、これは勝負あり!...と思ったら、ここもまたトレント選手が凌ぎましたね〜!!は〜、見てるだけでドキドキするっ!!
これは入ったと思ったんですけどね。多分トレントは体幹が強いからねじってずらしたのかもしれないですね。

ーー解説の朝倉海選手が「四の字フックだとバックチョークが極め辛い」みたいなことを言っていましたけど、それってどういうことですか??
お!いい質問ですね。この場面を見るとよくわかりますけど、四の字フックは相手のヘソのあたりに、まさに数字の4の字の形で足を掛けているのがわかるかと思います。よくある自分自身の両足で、相手の両足をフックしてチョークを仕掛ける状態と何が違うかわかりますか?

ーーうーん...。井上選手の体の位置がトレント選手よりちょっと上にある感じがしますけど...
ら、ら、雷美さん!僕は今猛烈に感動していますよ!
雷美さんの言う通り、井上選手の頭の位置がとトレントの頭の位置より上にあることも、このリアネイキッドチェークが極まらなかった原因の一つだと思います。すごく細かいことなのですが、頭の位置がちょっとずれているだけで、自分の力が相手に伝わらなくなるんですよ。

ーーなんか、今日はたくさん褒められてすごっく気分がいいです!!へへっ!あ、この場面がトレント選手が試合後のインタビューで言っていた「相手のチョークを2回凌いだ」の一つですね!
そうですね。トレントは『ツーオンワン』って言って、井上選手の片腕を両手で持ってディフェンスしていたんです。後ろを取ってリアネイキッドチョークを極める時って両腕がないと極まり辛い、片腕じゃ無理なんですよ。だからトレントは井上選手の片腕を両手で掴んで、リアネイキッドチョークをさせないようにしていたんです。

ーーただそのチョークを凌いだトレント選手を、井上選手はなかなか振り向かせてくれなかったですね〜!
これこれこれ!井上選手のこの足がいやらしいんです!

ーーわわっ!本当だ!!振り向こうとしているトレント選手の足が井上選手の足先に引っかかってる…!!
トレントからするとこれがムカつくんですよね〜。ウザい、超ウザい!これがなかったらトレントは身体の向きを変えられたんですよ。でも井上選手が足先でコントロールして、トレントが振り向いたと思ったらまたバックをとる。

ーーひえ〜!井上選手はトレント選手の身体を抑えるために自分の足を固定しながら、右の足先でトレント選手を振り向かせないようにコントロールしていたんですね…!
すごいっすよ、この足先がずーっと邪魔していますから。あとこの四の字フックも、やられている側はむちゃくちゃ苦しいんですよ。息ができない、空気が吸えないから本当に苦しいんですよ。体力も奪われるし。

ーーそんな苦しい状況の中であんなに抵抗していたんですね…!
それだけじゃなくて、ここ実はトレントが逆に攻めに行っているんですよ。ストレートアームバーと言って、相手の腕を伸ばしきるようにして極める技を狙いに行ってるんです。

ーーこの厳しい状況でトレント選手、攻めていたんですか?!す、すごい…
バックマウント取られている状況で相手の手首を持って、自分の頭を支点として相手の腕を伸ばすと極まる場合もあるんですよ。

ーーんん〜!!でもトレント選手の技は極まらなかったんですね...それにしても知れば知るほど凄いラウンドだったんですね…!!
ここは本当にトレントが良く凌いだなと思いました。

ーー本当ですね!!ただ、見ている側としてはやっぱり井上選手が有利に見えました〜。
いわゆるビッグインパクトは井上選手ですよ。

ーー最終ラウンドに入りました!3R目はトレント選手が積極的にリングの中央を取って前へ出ていますね!
井上選手はこのラウンド、ちょっと失速しましたね。

ーーたしかに!!トレント選手が手数を多く出して、本当にコツコツと打撃を当てている印象でした!
トレントは3R目に打撃を当ててるんですよね。だからトレントは「このラウンドは自分が攻めているし当てている、手応えをちゃんと掴んでるから自分の勝ちだ」と言っていましたね。

ーーこのラウンドは確かにトレント選手が当てていましたね!!
3Rの終わりも「良いフィニッシュの仕方をしていた」だから「どう見ても勝ったのは俺だろう」って。それはわからんでもないんですよ。

ーーうう〜ん…私も、わからんでもないです。だからトレント選手が試合後に怒っていたんですか??
トレントが怒っていた理由としては、自分は見えないダメージをコツコツ積み重ねていたのになんで?というところですよね。本人は手応えがあったんです。自分のほうが腹にだって脚にだって当てている。3R目は本当にトレントがコツコツ当てていました。

ーーたしかに…!
でも、井上選手のボディにパンチを当てた時、相手が「くの字」になったか?とか、ローを当てた時にあまりの痛さに相手がけんけん足になっていたか?というと、そうではなかったですよね。目に見えて相手にダメージが出ていたかというと、出ていないんです。

ーーたた、たしかに…!!井上選手がすんごい痛そうな表情や動きをしたかと言われるとしていないですね…!
僕もよくジャッジの講習会に行くんですが、ジャッジする時のイメージって、例えるなら天秤なんですよ。

ーー天秤??詳しく聞かせてくださいっ!!
試合でインパクトを残すたびに天秤に重りを載せていくんです。例えばこの試合だったら、2R目の井上選手が相手をコントロールしていたインパクトが大きかったので、井上選手側に大きい重りが載ります。

ーーほうほう!
3R目はトレントがコツコツ攻めたパンチやローキックの分だけ、ちっちゃい重りを載せます。最終的に最後のゴングが鳴った時点でその天秤がどっちに傾いていたかで判断する、自分はいつもそんな感じで見ています。

ーーなるほど〜!
3R目、トレントは天秤の傾きを回復させようとしていたんです。ちっちゃな重りをコツコツ積み上げたけど、2R目の井上選手の特大の重りに勝ったかと言ったら、そうじゃなかったというわけです。

ーーすっごくイメージしやすいです!!
食塩水に例えているという人もいましたね。感覚としては水の中に食塩を入れていくイメージで、最終的にどっちの濃度が高いのかっていう判断をするようです。

ーー天秤の話も食塩水の話もとっても興味深いですね〜!
RIZIN MMAルールでは選手がどれだけ印象やダメージを与えたか、どんな動きをしたかっていうのが重要になります。3R目の最後のトレント優位な状態が1分とか2分とか続いていたら、もしかしたらトレントが勝っていたかもしれないです。

ーーたしかに!!最後10秒くらいの状態がもっと続いていたら、判定が違っていたかもしれないんですね!
最後は10秒もなかったと思いますね、たぶん7秒くらいかな。あれが1分続いていたらトレントが勝っていたかも。それぐらい競った試合でした

ーーあ、ちょっと質問です!
はい、なんですか?

ーーあの〜、2R目で井上選手がコントロールしていましたけど、フィニッシュできなかった極めきれなかったというところは、マイナスの印象にはならないんですか?
別にマイナスにはならないと思いますよ。逆に言うと、フィニッシュを凌いだディフェンス力も評価はしていないと思います。あくまでも攻めている人間、試合を終わらせようとしている人間を評価していると思うので、ディフェンス力を評価したり、極めきれないからといってマイナスにしたりということはしていないと思います。

ーーそ、そうなんですか?!!じゃあ、2R目にバックを取られたトレント選手が井上選手のチョークを上手く避けても、それは評価されないんですね。。
それはこのMMAという競技の本質を考えればすぐにわかりますよ。

ーーど、どういうことですか??
だってMMAは相手を倒す、フィニッシュさせる競技ですよ。結果的に判定になった時に何が評価されるといえば、どちらがよりフィニッシュに近づけたか、ってことなんです。さっきから言っている判定基準も、判定のための判定基準ではなく、どちらがよりフィニッシュに近づいたか、というのが判定基準の根幹なんです。例えばメイウェザーのヘッドスリップやスリッピング・アウェーみたいな圧倒的なディフェンス力があったとしても、それは試合を終わらせることと真逆じゃないですか。あくまで評価されるのは『攻撃で』試合を終わらせに行く姿勢なんです。

ーーなるほど〜!!試合後のトレント選手のインタビューで(井上選手が極めきれなかったのは)それを凌いだ俺のディフェンス力の方が上だからっていうニュアンスのことを言っていましたけど...そこはMMAという競技の本質から考えるとアピールポイントにならないんですね。。
その態勢に持っていかれた時点でダメじゃんっていう話ですからね。

ーーぎゃふん!
何度も言いますけど、ディフェンスは評価されません。でも本当に競っていましたよ。だから井上選手も納得していないだろうし。試合全体としては二人とも良かったです。自分の中では二人とも評価は下がっていないです。凄く良い試合でした。

ーーたしかに!二人ともが凄かったから、これだけ凄い試合になったんですよね!
ただトレントは凄く腐っていましたね、本当に。翌日まで腐ってましたよ。素晴らしいパフォーマンスで評価は下げていないので胸張って欲しいとは伝えたのですが、よほど納得いかなかったんでしょうね。

ーー腐ってたって…(涙目)。トレント選手、それだけ納得いかなかったんですね〜。
今回のジャッジングに関してはいろんな見方があるんですが、でもこの試合は井上選手が勝って妥当だなと思います。

ーージャッジ3名とも井上選手でしたもんね!
コミッション的にスプリット判定が一番良くないんですよ。ジャッジの意思が統一されていないと、選手からしたら不安ですからね。だからそういう意味でも3-0の判定だったことは、ジャッジが統一した意識で判定してる、みんな同じ基準で見ているということが明らかに分かってよかったです。

ーーいや〜!全体を通して、今回は勉強になることが詰まりに詰まった試合でしたね!
二人とも22歳でこの試合がやれるって、本当にすごいことですよ。むちゃくちゃレベル高い試合でした。

ーーそういえば、22歳といえば今回のRIZIN.21では22歳の選手が他にも何人か出場していましたね。その事についてもお話聞きたいんです〜!
ではその辺は、また次回にしましょうか。

ーーはい!是非次回もお願いします!
はい、またよろしくお願いします。

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